レニが風呂上がりに、大浴場の更衣室で涼んでいる時だった。
「今日は暑いなぁ、なかなか汗がひかないよ。扇風機、「強」にしちゃえ。」
『ぱち』
今までそよ風を送っていた扇風機が、『ぅわん』と唸りをあげて勢いよく風を送り出す。
「うわー、やっぱり涼しい!・・・でもまだほてほてする・・・。」
レニはそう言うと、着ていたキャミソールの裾を胸の辺りまでたくし上げた。
扇風機の風を孕み、薄く、しなやかなキャミソールの生地がふわりとふくらむ。
「むー、風が入ってきていい感じー。気持いいや。」
そこへ、一日の疲れを体中に滲ませたマリアが、着替えやタオルを持ってやって来た。
今日は珍しく朝から晩までずっと外回りだったので、かなり『お疲れ』な様子だ。
「あ、マリア、お疲れ様。今日は暑かったから、大変だったでしょ。」
「レニもお疲れ・・・。今日は湿気が体にまとわりつく感じで・・・
おまけに風も余り吹かないから暑かったー!早くひと風呂浴びてさっぱりしたいわ。」
「うふふ、ホントにお・つ・か・れ。
食堂にキンキンに冷えたビールがあるらしいから、風呂上がりのお楽しみ、だね。」
「まぁ、そういう事なら急いであがんなきゃ。」
マリアはいそいそと服を脱ぎ始めた。
が、ふとその手の動きが止まった。
視線はレニに注がれている。
レニはといえば、相変わらず扇風機の前でキャミソールを膨らませている。
同性の前だからか、その無頓着な性格ゆえからか、
わずかにふくらみ始めた胸を無防備に晒したままだ。
マリアの目の色が変わった。
『これは・・・チャンスかも知れないわ・・・。』
努めて落ち着いた調子で、マリアはレニに話しかけた。
「・・・レニも少し胸が目立つようになってきたから、
そろそろブラジャーつけた方がいいわね。これから薄着の季節になるし・・・。」
「えっ・・・まだ、僕いらない!」
レニは慌ててキャミソールの裾をお腹の下まで下ろす。
マリアの突然な話の振りように、レニは動揺していた。
レニにとって、ゆっくりながらも以前とは明らかに変わってきているおのれの体の状態は、
本などで得た『知識』としてはあっても、いざ自分の身に起こる事となれば
『どうしたらいいかわからない』、不安でいっぱいの、できれば触れたくない、
『先送りにして今は無いことにしたい』問題だった。
普段は精密な蒸気計算機のように冷静に答えをはじき出すレニが、
こういった他愛もない日常の出来事で『いとも簡単に揺らいでしまう』。
マリアは、そのレニの落差を愛おしく感じた。
うろたえ、うっすらと頬を赤らめる様をもっと見たいと思った。
マリアは畳みかけるように、話を続ける。
「ダメダメ、こういうのは時期が来たら、早めの方がいいわ。カラダの為にも。
恥ずかしかったら、ブラの上に今まで通りキャミソール着てれば、
ブラウス1枚で薄着してても目立たないわ。
今度のお休みにカンナと紅蘭とでカワイイ下着屋さんに行く予定だし、ちょうどいいわ、
レニも行きましょう。」
「いいよ、また今度で。僕、まだ必要無いよ・・・ちいさいし・・・。
試着する時恥ずかしいし・・・。いらない・・・。」
レニはこの話題を振り切ろうと必死だ。
だが、断る『もっともらしい言い訳』を探しあぐねている。
「おんな同士なんだから、恥ずかしい事なんて何も無いのよ。かわいいのを選びましょうね。」
『ここは強引に話を持っていかないと』と、マリアは思った。
マリアの右手が、上着の内ポケットを探る。
『もう一押し、もう一押しよ、マリア!!』
緊張のために喉が乾き、『ごくり』と唾を飲み込んだ。
「じゃ、要るかいらないか、ちょ、ちょっと試しに採寸だけでもね、してみましょうよ!!」
「あッ!!マリアっ!!」
しゅたッ!!しゅるしゅるしゅる!!
目にも留まらぬ速さで、マリアはほのかに膨らんだレニの胸にメジャーを走らせた!
・・・この日の為に。
マリアはこの日の為に、素早い採寸が出来るよう、
衣装部屋のトルソー相手に血が滲むような練習を重ねていたのだ。
『あぁ!!やったわ!!サイズ不明だったレニのバストサイズを、初めてワタシが明らかに!!
ビバ!!レニのフクラミカケの胸!!』
マリアの表情は、今まで彼女が見せたことも無い、至福の表情に包まれていた。
それは、待ちに待っていた日だったのだ、マリア・タチバナにとって。
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